• A-1 ニューズ通信社

Report

2017-09-05
文部科学省の2020年度より始まる教育改革

アクティブラーニング*1


ヨーロッパ・アメリカの教育現場ではアクティブラーニングを早くから学校に導入してきた。中でも革新的な教育を行っているアメリカのミネルバ大学の創設者ベン・ネルソン氏の来日にあわせ取材する機会を得た。

ミネルバ大学は世界中からトップエリートを集めて、4年間で世界の7都市の寮を移動しながら、オンライン授業や各都市の行政・研究機関などとプロジェクト学習を行うという特異なカリキュラムを実践している。

創立2年目ながらすでに著名な国際企業が、学生たちの取り込みに動いているともいわれ、ハーバード大学を超えるのではないかと世界が注目している大学だ。

ネルソン氏は、ペンシルベニア大学ウォートン校に在校時、カリキュラムの改革を訴えて学校側に導入させ、さらにシリコンバレーでビジネスを成功させた後、再び教育界に戻ってミネルバ大学を創設したアメリカ教育改革の旗手だ。

ネルソン氏には、アクティブラーニングの経験のない日本の教師に、どう浸透させたらよいのか伺った。

ミネルバ大学の場合、すでにアクティブラーニングの経験能力がある教師を引く抜くのだが、それでも教師に対して4カ月の研修期間を設けており、授業を開始してからもしばらくの間は大学側がその様子を監視するという。

さらに授業時間をプレゼンテーション*5、ディスカッション*4ディベート*3、などに細分化し、それぞれの時間枠を決めることで、教師の負担を軽減している。

導入段階ではゼミ(セミナー)形式を採用すべき


日本の教育機関(幼稚園~高等学校)に携わる100万人もの教員に、アクティブラーニングを浸透させるにはどうすればいいのか。

ネルソン氏は、まず教育現場では導入を急がず、段階的に行うべきだと言う。
そもそもアクティブラーニングは、すべての生徒が主体となって全員参加する形式と、
一部の生徒(数人~10人程度)が主体となるゼミ(セミナー)形式がある。

生徒が主体的に全員参加する形式では、すべての生徒が授業中ずっとディスカッションやディベートに参加することになる。この場合ファシリテーター*2 としての教師が求められる能力も高くなり、ネルソン氏は導入段階としては適さないとする。

一方、
ゼミ(セミナー)形式では、2人の生徒がディベートしている間、他の生徒は聞き手に回り、ディベート終了後に教師が他の生徒に意見を求めるので、教師と生徒双方にとって導入ステップとしては適していると言える。

日本は米国型教育を目指すべきではない


また、日本全国にいる100万人の教員にどう研修するかについて、ネルソン氏は、学区ごとに数人の優秀な教師を選んで行政機関などが研修し、その教師が各学区の他の教師に学んだスキルを伝えることが最も効率的だと勧める。

日本の教育改革の目指すのは、欧米型ともいえるが、ネルソン氏は日本がアメリカ型教育を目指すことには否定的だ。アメリカではいま、大学の授業料が高騰して、中流家庭でも子どもを大学に進学させるのが困難になっている。

その背景には、大学のランキング競争が激化することで、経営側が学生を呼び込むために、キャンパスを整備し(ネルソン氏は「ディズニーランドのようだ」という)、スポーツや研究施設に多額の資金を投入し、著名教授の引き抜きのために報酬を釣り上げるなどした結果、学業の本筋ではないところで経費が掛かり、それが学費の高騰につながっていることがあるという。
アメリカの教育界ではすでに、格差社会の波が押し寄せているのだ。

日本の教育はいま、親の所得格差が子どもの学力格差につながる「負の連鎖」が問題となっている。グローバル化やITの加速度的な発展で、アクティブラーニングの重要性は益々高まることになるが、教育格差までアメリカに追随するべきではないと、ネルソン氏は警鐘を鳴らしている。

*1アクティブラーニング

*1「アクティブラーニング」は学ぶ側が主体的、積極的に取り組む学習方法。
これまで学校の授業は、教師から生徒へ一方向で行われていたが、2020年度からは全員参加型のディベートやディスカッション、プレゼンテーションが導入され、日本の教育制度はまさに「ゆとり教育」導入以来の大改革となる。

LinkIcon

*2ファシリテーター

*2「ファシリテーター」とは、自身は集団活動そのものに参加せず、あくまで中立的な立場から活動の支援を行うようにする人。
例えば会議を行う場合、ファシリテーターは議事進行やセッティングなどを担当するが、会議中に自分の意見を述べたり自ら意思決定をすることはない。

LinkIcon

*3ディベート・*4ディスカッション・*5プレゼンテーション

*3「ディベート」とは、討論のこと。
学校教育では特に、提示した主題につき肯定側・否定側に分かれて討議するという仕方。

*4「ディスカッション」とは、参加者が意見や情報の交換をしたり、問題を解決したりする協力型の議論の形態。
日常生活でも会社の会議やサークルのミーティングなどで常におこなわれてい る。

*5「プレゼンテーション」 は、伝えたいことを説明する手段の一種で、聴衆に対して情報を提示し、理解・納得を得る方法。 略して「プレゼン」とも言われている。

LinkIcon